Giuseppe Fortunino Francesco Verdi
La donna é mobile ≪Rigoletto≫ Atto Terzo
<イタリア語歌詞> | <その2> | <その3> | |
ラ ドンナ エム モービレ La donna é mobile |
風の中の | 風の中の | 風の中の |
クワル ピュウマ アル ヴェント Qual piuma al vento, |
羽のように | 羽のように | 羽のように |
ムータ ダッチェント Muta d’accento |
いつも変わる | いつも変わる | いつも変わる |
エッ ディ ペンスィエーロ E di pensiero. |
女ごころ | 女ごころ | 女ごころ |
セムプレ ウナマービレ Sempre un amabile |
涙ころし | あでな笑顔 | あやの言葉 |
レッジャッドロ ヴィーゾ Leggiadro viso, |
笑顔つくり | 熱い涙 | ほおのわらい |
イン ピアント オ イン リーソ In pianto o in riso, |
うそをついて | あれもこれも | まなのなみだ |
エム メンヅォニェーロ È menzognero. |
だますばかり | 嘘いつわり | あてにならず |
ラ ドンナ エム モービレ La donna é mobile |
風の中の | 風の中の | 風の中の |
クワル ピュウマ アル ヴェント Qual piuma al vento, |
羽のように | 羽のように | 羽のように |
女心 変わるよ | |||
エッ ディ ペンスィエル E di pensier, |
変わるよ | 変わるよ | 変わるよ |
エー エッ ディ ペンスィエル E E di pensier. |
ああ 変わるよ | ああ 変わるよ | ああ 変わるよ |
エェッ セムプレ ミーゼロ È sempre misero |
わが身さえも | あわれ恋に | かれのなさけ |
キ アッ レーイ サッフィーダ Chi a lei s’affida, |
忘れ果てて | 狂う命 | うかつ信じ |
キッ レ コンフィーダ Chi le confida, |
迷わされる | 焦がれ惑うは | こころゆるす |
マル カーウト イル コーレ Mal cauto il core! |
愚か者よ | 愚か愚か | ひとのあわれ |
プル マーイ ノン センテスィ Pur mai non sentesi |
甘い恋の | されど恋の | さあれ恋の |
フェリーチェ アッピエーノ Felice appieno |
味を知らず | なぞは深く | 味も知らず |
キッ スッ クエル セーノ Chi su quel seno, |
夜も昼も | 迷うも楽し | はだに触れで |
ノン リーバ アモーレ Non liba amore! |
夢のうちに | 女ごころ | なんのいのち |
ラ ドンナ エム モービレ La donna é mobile |
風の中の | 風の中の | 風の中の |
クワル ピュウマ アル ヴェント Qual piuma al vento, |
羽のように | 羽のように | 羽のように |
ムータ ダッチェント エッ ディ ペンスィエル Muta d’accento E di pensier, |
女心 変わるよ | 女心 変わるよ | 女心 変わるよ |
エッ ディ ペンスィエル E di pensier, |
変わるよ | 変わるよ | 変わるよ |
エー エッ ディ ペンスィエル E E di pensier. |
ああ 変わるよ | ああ 変わるよ | ああ 変わるよ |
<作詞 Francesco Maria Piave> |
《 直 訳 》
風に舞う羽根のように女は気まぐれ。
言葉も思いもすぐに変えてしまう。
いつも愛らしく優しげなあの顔で、
泣いたり笑ったりするのもみないつわりなのさ。
いつも哀れなのは、女に注意しないで、
信じる者、心を捧げる者。
とはいえ、女の胸の情けを知らない奴には
本当の幸せなんてものは分からないのさ!
解説
・・・本当に移ろいやすいのは女ではなく、公爵の心だと思いますが・・・
軽快で覚えやすいこの「女心の歌」が事前に知れ渡ることを嫌ったヴェルディは
総リハーサルの朝(初演の3日前)にやっと公爵役のテノール歌手に楽譜を渡しました。
しかし初演の翌日にはヴェネツィア中でこの歌が歌われていたというほど
一気に広まり、大人気となったそうです。
原作は、ヴィクトル・マリ・ユゴーの戯曲 「王者の悦楽」(※)
16世紀のフランス国王の不行跡を題材としたため、
初演の翌日に上演禁止になったという、いわくつきの悲劇です。
そのため、「リゴレット」 にも政治検閲がかかり、最終的に
・舞台を移すこと。
・登場人物の名前を変えること。
・貴族たちにとってよろしくない場面は取りやめること。
などを条件にようやく1851年に初演を迎えました。
※ 「逸楽の王」 とも。 原題は “Le Roi s’amuse” 『王様はお楽しみ』
「リゴレット」 のあらすじ
16世紀、イタリア北部の町マントヴァ。 マントヴァ公爵の宮廷では舞踏会が催されている。
女好きで有名な公爵は、郊外の家に住み、日曜日に教会で見かける美しい町娘に目をつけ、なんとかものにしたいと考えている。
マントヴァ公爵の道化師、せむしのリゴレットは毒舌を吐いて、みなに嫌われていた。
騎士からリゴレットが女を囲っているという話を聞いた廷臣たちは彼の日ごろのあくどい言動の仕返しにその女を拉致しようと話し合う。
華やかな舞踏会の最中、モンテローネ伯爵が突然入ってきて、一人娘がマントヴァ公爵に辱められたと詰め寄る。 彼を捕らえよと命じる公爵と、父親の苦悩を冷笑するリゴレットに伯爵は呪いの言葉を浴びせ、リゴレットはその呪いにショックを受けて青ざめる。
その夜、リゴレットはいつものように夜道を我が家に向かうが、どうしてもモンテローネ伯爵の呪いが忘れられない。 そのときスパラフチーレと名乗る殺し屋が現れ、用があれば夜ならいつでもここにいると言って去っていく。
家には最愛の娘ジルダが待っていた。 リゴレットは、唯一の生きがいである美しい一人娘を好色な公爵の目にふれないよう、日曜の教会のミサ以外には外に出すことを禁じていた。
リゴレットがふたたび家を出た後、学生の服装に身をやつした公爵が家に忍び込み、
このとき初めて前から目をつけていた町娘がリゴレットの娘ジルダだということを知る。
父親が出て行くと、ジルダは教会で見かけた若い男の人に心奪われていると乳母に打ち明けるが、そのとき金をつかませ乳母を遠ざけた公爵が現れジルダに愛をささやく。
いきなり現れた想い人(学生を装う公爵)に驚いたものの、彼が訴える愛の言葉にうっとりとなったジルダが名前を問うと、公爵はしばらく考えてから、「私の名はグァルティエール・マルデ。貧乏な学生です」 と答える。
そのとき乳母が外に人の気配がするといって戻ってきたので公爵は家の裏手から出て行く。
外ではリゴレットの愛人を拉致して公爵に献上しようと、悪い廷臣たちが仮面をつけて
集まっていた。 戻ってきたリゴレットをだまし、彼らは妾と勘違いしたジルダをさらっていく。
自分の家が荒らされ、娘が誘拐されたのを知ったリゴレットは呪いだ!と叫んで気を失う。
いったん宮殿に戻ったものの、公爵はもう一度ジルダに会いたくなり、夜中こっそり彼女の家に向かう。 しかし家は空っぽで誰もいない。 宮廷に戻った公爵は激しく嘆く。
そこへ廷臣たちが現れ、リゴレットの家から情婦を連れて来たというのを聞き、ジルダがここにいると知った公爵は一転して喜んで部屋に向かう。
一方、宮廷にやってきたリゴレットは娘を探す。 廷臣たちの様子からジルダが公爵の部屋にいると知ったリゴレットは扉に駆け寄るが、廷臣たちに阻まれ、ついに泣き懇願する。
そのとき部屋からジルダが走り出てきて、父親の腕に身を投げる。
廷臣たちを出て行かせ、二人きりになると、ジルダはこれまでのいきさつを涙ながらに
打ち明ける。 そのとき逮捕されたモンテローネ伯爵が護送されて部屋を横切る。
公爵の肖像画を見上げながら、呪いは無駄だったかと嘆く伯爵の言葉を耳にしたリゴレットは許しを求めるジルダの懇願にも耳を貸さず、復讐を誓う。
リゴレットは殺し屋のスパラフチーレに公爵殺しを依頼する。スパラフチーレは妹のマッダレーナと公爵が居酒屋で会う機会をととのえる。
そこへリゴレットとジルダがやってくる。 まだ公爵を愛しているというジルダにリゴレットは壁の隙間から居酒屋をのぞかせる。 すると公爵が騎兵隊の制服を着て居酒屋に入ってきて「女心の歌」 を歌い、マッダレーナに言い寄る。
裏切られたと知り、泣くジルダにリゴレットは 「男装して馬に乗り、 ヴェローナに行け。わしも明日には行くから」 といい、家に帰らせる。
男装したジルダはこっそり居酒屋に戻ってきて様子をうかがっている。
マッダレーナは公爵が気に入り、殺すのをやめさせようとするが、スパラフチーレは譲らない。それなら逃がしてしまうという妹にスパラフチーレは、「そこまで言うのなら、真夜中の12時の鐘が鳴るまでに誰かがここに来たら、そいつを身代わりに殺してもいい」 と妥協する。
すべてを聞いていたジルダは公爵のために命を投げ出す決意をし、扉を叩く。外は激しい嵐で、ひっきりなしに稲妻が光っている。
やがて嵐は静まり、リゴレットがやってくる。 スパラフチーレは袋を引きずり、このなかにお目当ての男が入っているという。 リゴレットは中を確かめようと灯りをくれというが、スパラフチーレは先に金を求め、財布を受け取るとさっさと部屋の奥へ消えていく。
復讐が遂げられたと喜ぶリゴレットが波間に袋を沈めようと、河岸へ引っ張っていく途中、遠くから公爵の歌う 「女心の歌」 が聞こえてくる。
驚いたリゴレットが袋を開けると、折しも稲妻が光り、瀕死のジルダを照らしだした。
叫ぶリゴレットにジルダは 「お父様をだましたの・・・罪なのは私です。彼を愛しすぎました・・・だから 今、彼の身代わりに死ぬの」 と許しを請いながらこと切れる。
リゴレットは 「ああ、あの呪いだ!」 と髪を掻き乱しながら、ジルダの遺体の上に倒れ伏す。