作曲 Eric Alfred Leslie Satie 1866-1925 「Je te veux」
あなたが大好き
なにもいわずに 抱きしめて
いとしい人 あなたがすべて
かなしいことは 忘れましょう
ただふたりだけの愛のしるしがほしいの
あなたのそばで 生きてゆけるなら
ほかになにも欲しくはないわ
わたしのこころ あなたのくちびる
わたしはあなた あなたはわたし
なにもいわずに 抱きしめて
愛しい人 あなたがすべて
かなしいことは 忘れましょう
ただふたりだけの愛のしるしがほしいの
あなたのひとみに うつる愛の誓い
そうよふたりはもう離れはしない
夢にただよい 抱きあったままで
炎にやかれて ひとつになるの
もう泣かないで いとしい人
わたしがここにいつもいるから
みんな忘れて ふたりだけの
かけがえのないしあわせがほしいの ジュトゥヴ
女声版
<フランス語歌詞> | <日本語歌詞> |
※ J’ai compris ta détresse, Cher amoureux, Et je cède à tes vœux, Fais de moi ta maîtresse. Loin de nous la sagesse, Plus de tristesse, J’aspire à l’instant précieux Où nous serons heureux: Je te veux. |
※ あなたの気持ち わかるわ かわいいひとね 恋をしましょう この世のすべて 忘れ去り すてきなひととき 過ごしましょう すぐに |
Je n’ai pas de regrets Et je n’ai qu’une envie: Près de toi, là tout près, Vivre toute ma vie, Que mon cœur soit le tien, Et ta lèvre la mienne, Que ton corps soit le mien, Et que toute ma chair soit tienne! |
いいの それで のぞみはひとつ あなたによりそい 生きてゆくのよ この心は あなたのものよ あたしのものよ あなたのからだ すべて |
※ Refrain | ※ くりかえし |
Oui, je vois, dans tes yeux La divine promesse Que ton cœur amoureux Vient chercher ma caresse. Enlacés pour toujours, Brûlés des mêmes flammes, Dans des rêves d’amours Nous échangerons nos deux âmes! |
あなたの目に やどるまごころ 抱きしめたい すてきなあなた 燃え上がるの 恋のほのおが 見続けるの ふたりの恋の夢 |
※ Refrain | ※ くりかえし |
男声版
<フランス語歌詞> | <日本語歌詞> |
※ Ange d’or, fruit d’ivresse, Charme des yeux, Donne toi; je te veux; Tu seras ma maîtresse. Pour calmer ma détresse Viens, ô déesse, J’aspire à l’instant précieux Où nous serons heureux; Je te veux. |
※ こころ酔わせる 天使よ そばにおいで 恋をはじめよう この世のすべて 忘れ去り すばらしい時を 味わうのだ すぐに |
Tes cheveux merveilleux Te font une auréole, Dont le blond gracieux Est celui d’une idole. Que mon cœur soit le tien, Et ta lèvre la mienne, Que ton corps soit le mien, Et que toute ma chair soit tienne! |
白いうなじと ブロンドの髪を 見つめたまま われを忘れて 身も心も きみにうばわれ 恋に燃える きみのそのくちびる |
※ Refrain | ※ くりかえし |
Oui, je vois, dans tes yeux La divine promesse Que ton cœur amoureux Ne craint plus ma caresse. Enlacés pour toujours, Brûlés des mêmes flammes, Dans des rêves d’amours Nous échangerons nos deux âmes! |
あおいひとみに やどるまごころ 抱きしめたい やさしいきみを 愛しあおう 燃え尽きるまで 見続けよう ふたりの恋の夢 |
※ Refrain | ※ くりかえし |
直訳
<訳>
あなたが欲しい(女声版)
私にはあなたの苦しみが分かったの 後悔なんかしていない そう 私はあなたの眼のなかに |
おまえが欲しい(男声版)
黄金の天使 心酔わせる果実 おまえの美しい髪の毛が そう 僕はおまえの眼のなかに |
解説
“歌うワルツ”の副題を持つ『ジュ・トゥ・ヴー(あんたが欲しいの)』は、サティが34歳(1900年)のとき、シャンソニエ、アンリ・パコリの作詞に作曲しました。
もともとは当時、【スロー・ワルツの女王】といわれた花形シャンソン歌手、ポーレット・ダルティのレパートリーとして盛んに唄われた曲(サティは彼女のためにこの曲を作曲)ですが、のちに男性版も歌詞を変えて作られました。
また、サティ自身の手でピアノ編曲版も作られ、ピアノ独奏用には歌曲にはない部分が含まれ、楽曲は拡大されています。
サティは20歳頃から文学酒場(カフェ)「黒猫」や「旅籠屋”釘”」などでピアニストをして生計を立てていました。1900年~03年にかけて、この「おまえが欲しい」をはじめシャンソンやポピュラー音楽の作曲を続け、一説によると、その数は未出版のものを含めて60曲以上あるといわれています。
サティはこうしたシャンソンや、ミュージックホールとか、カフェなどのために作曲された音楽を『おそるべき粗悪品』と呼んでいました。しかし、サティ自身はこのような世界に身を置いて作曲することを愉しんでおり、決して手を抜いた『粗悪品』として作曲したりすることはありませんでした。
かくして「おまえが欲しい」はサティのシャンソンの中で最も有名な曲になりましたが、なんとも魅力的で粋な作品ですね。透明でサラッとした音楽に、こんな濃厚な歌詞がついているとは。(シャンソン、奥深し・・)