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歌劇≪愛の妙薬≫第2幕 より『人知れぬ涙』歌詞と解説(作曲:ガエターノ・ドニゼッティ)

Gaetano Donizetti  Una Furtiva Lacrima ≪L'elisir d'amore≫

第2幕第2場。
愛の薬を買う金を得るために兵隊になったと聞き、アディーナが目に涙を浮かべたのを盗み見た
村の純情な若者ネモリーノが彼女の愛を確信して歌うアリア。
リリック・テノール(テノール・リリコ)のアリアのなかで最高傑作といわれている。

 

 <イタリア語歌詞>  <日本語歌詞>
ウーナ フルティーヴァ ラーグリマ
Una furtiva lagrima
ひそかなるなみだ
ネッリ オッキ スオーイ スプントォ
negli occhi suoi spuntò...
ほおを伝えり
クエッレ フェストーゼ ジョーヴァニ
quelle festose giovani
ただひとり きみは
インヴィディアル セムブロォ
invidiar sembrò...
思い沈みて
ケッ ピュウッ チェルカンド イーオ ヴォ ケッ ピュウッ チェルカンド イーオ ヴォ
Che più cercando io vo? Che più cercando io vo?
わが求めし まことの恋の
マーマ  スィイムマーマ ロ ヴェード ロ ヴェード
M'ama, si m'ama, lo vedo, lo vedo.
そが輝きにこもるをさとりぬ
   
ウン ソーロ イスタンテ イ パルピティ
Un solo istante i palpiti
ふかくきみが秘めし
デル スーオ ベル コル センティル
del suo bel cor sentir!..
愛の言葉と
イ ミエーイ ソスピル コンフォンデレ
I miei sospir confondere
人知れず洩らす
ペル ポーコ ア スオーイ ソスピル
per poco a' suoi sospir!
きみがため息
イ パルピティ イ パルピティ センティル
I palpiti, i palpiti sentir!
われのみ聞く 其の日の
コンフォンデレ イ ミエーイ ソスピル コ スオーイ ソスピル
confondere i miei sospir co' suoi sospir!
われのみ聞く 其の日の
   
チェーロ スィ プオッ モリル
Cielo, si può morir;
こよなきたのしさ
ディ ピュゥン ノン キエード
di più non chiedo.
思えば わが胸は
ア チェーロ スィ プオッ モリル
ah! cielo, si può morir;
よろこびにわき立つ
ディ ピュゥン ノン キエード ノン  キエード
di più non chiedo, non chiedo.
よろこびにわき立つ

Eccola... Oh! qual le accresce beltà l'amor nascente!
A far l'indifferente si seguiti cosí finché non viene ella a spiegarsi.


《直訳》

人知れぬ涙が あのひとの目にうかんでいる・・・
あの陽気な娘たちを うらやんでいるかのように・・・
俺はこれ以上なにを求めようというんだ!
あのひとは俺を愛している
そうだ わかったぞ
ただ一瞬だけでも 彼女の心のときめきを聞くとは!
俺のためいきが 少しのあいだ あのひとのためいきとまざり合ったのだ!
神さま、もう死んでもいい、これ以上なにも求めない。
ああ、これ以上!

あのひとが・・・ おお! 愛が生まれて なんと美しさが加わったことか!
だが俺は 知らん顔をしていることにしよう 彼女が心のうちを明かすまでは

 

 

解説

スペインのバスク地方を舞台とする牧歌的なオペラ・ブッファ。
これ以前のオペラ・ブッファは音楽により、笑いや愉しさが起こっていましたが、この作品は登場人物の人物像が描き出されることにより、 人間の滑稽さが伝えられ、オペラ・ブッファの歴史上重要な分岐点とされています。
名アリア「人目を忍ぶ涙」を加えるかどうかでドニゼッティと台本作家フェリーチェ・ロマーニの間で意見が相違していましたが、 最終的にはドニゼッティの主張どおり付け加えられました。
初演は、1832年5月12日、ミラノ、カノッビアーナ劇場。
台本は当時評判をとっていたオベールの戯曲<媚薬>を下敷きにしてかかれました。
シーズンが差し迫っての作曲依頼だったため、速筆のドニゼッティにしても異例の速さで、 作曲者の話では2週間、遅くとも1ケ月足らずのうちに完成されました。

 

「愛の妙薬」 のあらすじ

 

第1幕

19世紀、北スペイン、バスク地方の小さな村。
純真で内気な青年ネモリーノが、遠くから外で本を読んでいる地主の娘アディーナの姿にみとれている。
彼はアディーナを深く愛しているが、はっきりした態度に出る自信がなくて悩んでいる。
やがてアディーナが突然笑いだし、それを聞いて何がおかしいのかと集まってきた人々にせがまれて、 読んでいた本 『トリスタンとイゾルデの物語』 のさわりを語る。
それは美男のトリスタンが残忍な美女イゾルデに恋し、魔術師からもらった愛の妙薬を飲ませたところ、 すぐにイゾルデの心は優しくなり彼との愛に生きたというもの。
一同は、そんな妙薬を誰が作るのか知っていたらと歌う。
遠くから太鼓の音が響く。勇ましい行進曲が聞こえ、ベルコーレ軍曹が小隊の兵士たちを引き連れてやってきた。
村人たちに出迎えられたベルコーレは美しいアディーナに目をつけ、ギリシャ神話に出てくる羊飼いパリスが 美女アフロディーテにリンゴを捧げて恋に落ちたという話を引き合いに出しながら口説き、結婚を申し込むが、アディーナはそれをかわす。
村人たちはふたりの様子をみてあれこれ言い、心中穏やかでないネモリーノは自分に勇気のないことを嘆く。
やがて皆は去り、アディーナとネモリーノだけが残る。
アディーナは、話しかけるネモリーノに病気の叔父さんのところへ行ったらと、精一杯愛を打ち明ける彼を冷たくあしらう。
村の広場。トランペットが鳴り、村人たちが出てきたところへ派手に飾り立てた馬車に乗って一見偉そうに見える男がやってくる。
いかさま薬売りのドゥルカマーラは、若返りの薬や万病に効く薬など、さまざまなあやしげな薬の効能をまくしたて、村人たちを相手にひと商売する。
おひとよしのネモリーノは、ドゥルカマーラの口上を聞いて、「きっと神様がお遣わしになった偉い人に違いない」 と思い込み、 アディーナが読んでいた本にでていた 「イゾルデ姫の愛の媚薬」 を持っていないか尋ねる。
そんなものあるわけないが、ドゥルカマーラは内心、こんなだまされやすいやつは初めてだとほくそえみ、 ビンに入った安物ぶどう酒を 「愛の妙薬」 と称して、逃げる時間をかせぐために一日たったら効いてくると言って売る。
ネモリーノは有頂天になり、さっそく妙薬を飲む。酔いを薬の効果と思って喜び、アディーナが近づいてきてもいつもと違って自信たっぷり。
そんなネモリーノの態度に自尊心の強いアディーナは腹を立て、彼へのあてつけから、そこへやってきたベルコーレとの結婚をあっさり了承してしまう。
それでもネモリーノは明日になれば薬の効果が出ると強気だが、ベルコーレのもとへ明日小隊を率いて出発せよとの命令が届き、今日中に結婚する流れになってしまう。
アディーナは動揺しているネモリーノを見て、承諾する。
ネモリーノは一日だけ待ってくれと頼み、怒り出すベルコーレを大目に見てあげてとアディーナがなだめる。
そんな3人のやりとりをおもしろそうに皆が眺めている。
アディーナとベルコーレは公証人に知らせに行くことになり、ネモリーノは先生助けて、と叫びながらドゥルカマーラを探し、一同はそれを笑う。

 

第2幕

アディーナの農場。
アディーナとベルコーレの婚礼の宴会が開かれ、その席にドゥルカマーラも招かれている。
そこへ公証人が結婚証書を手に現れるが、ネモリーノに思い知らせてやろうと思っていたアディーナは彼の姿が見えないので、署名を今晩まで待ってほしいと延期する。
宴会の模様をそっとみつめていたネモリーノはドゥルカマーラをつかまえ、今すぐに効く妙薬が欲しいと泣きつく。
ドゥルカマーラはそれなら妙薬をもう一服飲めばいいというが、ネモリーノは金がなく、絶望し途方にくれる。
そんな彼をベルコーレが見つけ、金が欲しいなら兵隊になればいいとそそのかす。
ネモリーノは迷うが、ついに入隊を決意し、契約書にサインして金を手にする。
農家の庭先で村の女たちが集まってうわさ話をしている。
ネモリーノの叔父さんが死んだので、彼に莫大な遺産が転がりこむらしい。
そこへ兵隊になった金で愛の妙薬をふたたび買って飲んだネモリーノがやってくるので、娘たちは玉の輿を狙い、いっせいに色目を使う。
ネモリーノはそれを妙薬の効き目だと喜び、やってきたドゥルカマーラとアディーナはネモリーノが娘たちに言い寄られている意外な光景に驚く。
本当はネモリーノに気があるアディーナは、誰かに彼をとられてしまうかもしれないと心配になり、彼が娘たちに囲まれて出てゆくといらだちを募らせるが、 ドゥルカマーラからネモリーノが愛の妙薬を手に入れたいばかりに入隊したことを知ると、彼の愛情の深さを知り、感動する。
その様子を見たドゥルカマーラは抜け目なく、アディーナにも愛の妙薬を売りつけようとするが、アディーナは妙薬は私のこの瞳のなかにと言ってとりあわない。
物陰から見ていたネモリーノは、真相を知ったアディーナの瞳にかすかに涙が浮かんでいたのを見て、ようやく彼女の愛を確信する。
アディーナがやってきて、ネモリーノに入隊の契約書は私が買い戻したから、この土地に残って欲しいという。
しかし今に打ち明けるぞというネモリーノの期待を裏切って、アディーナは突然さようならと言って、 立ち去ろうとするので、ネモリーノはアディーナに契約書を返し、愛してくれないなら兵隊になって死ぬと言い切る。
それを聞いてアディーナもついに本心を打ち明け、永遠の愛を誓う。
ネモリーノは先生(ドゥルカマーラ)は俺をだまさなかったと喜びにひたる。
そこへ兵士たちを従えたベルコーレがやってきて、ふたりの様子に目を疑うが、アディーナがネモリーノを夫に選んだことを告げると、 世の中には女性はいくらでもいると、あっさりあきらめる。
ドゥルカマーラはネモリーノの叔父が死んで、彼が大金持ちになったことを披露し、それも自分の妙薬の効き目と宣伝し、 人々は彼の愉快な口上に誘われて先を争って薬を買い求める。
アディーナとネモリーノも彼のおかげで幸せになり、妙薬の魔法の効果を決して忘れることはないと感謝する。
いかさまの薬を売りつくして去っていくドゥルカマーラの馬車を、人々が帽子を振って見送る。