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歌劇《ローエングリン》第3幕への前奏曲『婚礼の合唱』歌詞と解説(作曲:リヒャルト・ワーグナー)

 Richard Wagner
 BRAUTCHOR (Treulich geführt ziehet dahin)
   AUS DER OPER ”LOHENGRIN” VORSPIEL ZUM 3 AUFZUG

『婚礼の合唱 (真心こめて、御先導いたします)』歌詞

 

婚礼の合唱

み神の みむねに
恵まれて契りたる
さかえに 輝く 
二人に喜びあれ

ますらをよ すすめよ
花嫁よ すすめよ
いかめしき祝い終え
心ゆく語らいに 
しつらえし伏戸に
手を取りて歩めよ

み神の みむねに
恵まれて契りたる
さかえに 輝く 
二人に喜びあれ

さちあれよ
 祝婚の合唱

まごころ こめてぞ
愛の幸(さち)を うけてよ
勝利の 勇気は
まこと愛の契りぞ

光栄(はえ)ある君 いざここへ
若き君 いざここへ
祝いの宴 おわらば
愛の幸 くめよかし
かぐわしき宮居(みやい)に
愛の夢 むすべや

まごころ こめてぞ
愛の幸を うけてよ
勝利の 勇気は
まこと愛の契りぞ

契りなり
 婚礼の合唱

かがやく 門出に
送らまし きみ二人
ときわの 契りに
限りなき栄(さかえ)あれ

たけき君 来ませや
やさし姫 ともども
新しき 愛の家に
むつまじく 住み給え
ささぐる祝(いわい)の歌
ひびけよ とこしえに

かがやく 門出に
送らまし きみ二人
ときわの 契りに
限りなき栄(さかえ)あれ

栄(さかえ)あれ

 

原詩と直訳 

 

(ALLE MÄNNER UND FRAUEN) 《訳》(男たちと女たち一同)
トロィリヒ  ゲフュールト ツィーエット ダーヒン
Treulich geführt ziehet dahin,
愛の祝福が見守る喜びの部屋に
ヴォー オイヒ デァ ゼィーゲン デァ リーベ ベヴァール
wo euch der Segen der Liebe bewahr'!
まごころこめた導きに従って進みなさい
ズィークライヒャー ムート ミンネゲヴィン
Siegreicher Muth, Minnegewinn
勝利でむくわれた勇気と獲得された愛が
アイント オイヒ イン トロイエ ツゥム ゼィーリヒステン パール
eint euch in Treue zum seligsten Paar.
あなたがた二人をこよなく幸せな夫婦に結びます
   
Streiter der Tugend, schreite voran !
Zierde der Jugend, schreite voran!
Rauschen des Festes seid nun entronnen,
Wonne des Herzens sei euch gewonnen!
美徳を守って闘った勇士よ 進みなさい
咲き誇る青春の花よ 進みなさい
祝典のざわめきからいまこそ離れて
おたがいの胸を歓喜でみたしなさい!
   
(Die Türen werden geöffnet) (扉が開かれる)
   
Duftender Raum, zur Liebe geschmückt,
nehm euch nun auf, dem Glanze entrückt.
愛の支度に飾られ 芳香にあふれた部屋が
まばゆい光の席から退ってきたあなたがたを迎えます
Treulich geführt ziehet nun ein,
wo euch in Segen die Liebe bewahr !
Siegreicher Mut, Minne so rein
eint euch in Treue zum seligsten Paar !
愛の祝福が見守る喜びの部屋へ
まごころこめた導きに従って入りなさい
勝利でむくわれた勇気と清らかな愛が
あなたがた二人をこよなく幸せな夫婦に結ぶのです
   
(ACHT FRAUEN)
Wie Gott euch selig weihte,
zu Freuden weihn euch wir.
In Liebesglücks Geleite
denkt lang der Stunde hier !
(8人の女たち)
神に祝福されて幸せを授かった二人
私たちもあなたがたに喜びを贈ります
愛の幸せに導かれて いまこの一刻を
とこしえに忘れないように!
   
(ALLE MÄNNER UND FRAUEN)
Treulich bewacht bleibet zurück,
wo euch in Segen die Liebe bewahr.
Siegreicher Mut, Minne und Glück
eint euch in Treue zum seligsten Paar.
(男たちと女たち一同)
愛の祝福が見守る喜びの部屋に
まごころこめて守られて留まりなさい
勝利でむくわれた勇気 そして愛と幸福が
あなたがた二人をこよなく幸せな夫婦に結ぶのです
   
Streiter der Tugend, bleibe daheim !
Zierde der Jugend, bleibe daheim !
Rauschen des Festes seid nun entronnen,
Wonne des Herzens sei euch gewonnen !
美徳を守って闘った勇士よ ここに留まりなさい
咲き誇る青春の花よ ここに留まりなさい
祝典のざわめきからいまこそ離れて
おたがいの胸を歓喜でみたしなさい!
Duftender Raum, zur Liebe geschmückt,
nahm euch nun auf, dem Glanze entrückt.
愛の支度に飾られ 芳香にあふれた部屋が
まばゆい光の席から退いてきたあなたがたを迎えました
   
Treulich bewacht bleibet zurück, 愛の祝福が見守る喜びの部屋に
wo euch in Segen der Liebe bewahr! まごころこめて守られて留まりなさい
Siegreicher Mut, Minne und Glück, 勝利でむくわれた勇気 そして愛と幸福が
eint euch in Treue zum seligsten Paar. あなたがた二人をこよなく幸せな夫婦に結ぶのです
Zum seligsten Paar. この上なく幸せな夫婦に


解説

結婚式の定番曲として、シェークスピアの戯曲「夏の夜の夢」に使われるメンデルスゾーンの結婚行進曲とともに有名です。
「ローエングリン」は、「さまよえるオランダ人」 「タンホイザー」 とならんで、ワーグナーの三篇のロマンティック・オペラの最後の作品であり、 中高ドイツ語で書かれた叙事詩「ローエングリン」、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの叙事詩「パルツィヴァール」、 聖杯伝説、ドイツ伝説、白鳥の騎士、若きティトゥレルなどいくつかの伝説に10世紀ヨーロッパの史実を素材にして、ワーグナー自身が台本を書きました。
超自然的な現象と人間の本質、神と人との触れ合いを継続することの難しさを象徴したストーリーを高貴で純粋な音楽が彩っています。

1850年8月28日、ワイマールの宮廷楽長リストの指揮により、ゲーテ祭(ゲーテの誕生日)にワイマール宮廷劇場にて初演されました。
ヴィルトゥオーソとして名高いピアニストでもあった指揮者のフランツ・リストは、ワーグナーの親友であり、
1849年の革命に加わったため指名手配されたワーグナーをスイスに亡命させ、金銭的にも援助しています。
ふたりのつながりは深く、リストの娘で、指揮者ハンス・フォン・ビューローの妻だったコジマは離婚後、ワーグナーと再婚しました。
亡命していたワーグナーが始めてローエングリンを見ることができたのは1861年、ウィーンで。
初演から実に10年以上も後のことでした。

 

「ローエングリン」 のあらすじ

 

第1幕 Erster Aufzug

西暦十世紀初頭のブラバンド公爵領。アントワープに近いシェルデ川ほとりの緑野。
騎士たちを従えたドイツ王ハインリヒ1世が神聖な樹とされる樫(かしわの場合もあり)の古木、「裁きの樫」の下に腰掛けている。
王はハンガリーの脅威に対して兵を招集するためにブラバンド国を訪れたのだが、領主は死亡しており、一騒動持ち上がっていた。
ブラバンド公爵が残した二人の子供の後見人であるフリードリヒ・フォン・テルラムント伯爵が公爵の娘エルザを弟ゴットフリート殺しの罪で訴えたのである。
王の前で審判が開かれ、テルラムントはエルザ姫が結婚の申し込みを拒絶したことをあげ、弟がいなくなれば自分が女領主となり、意中の男を公然と迎えようと思ったに違いない、 彼女の罪を探知したからこそ、自分は彼女と結婚することを断念し、キリスト教が広がるまえにこの国を統治していた異教徒の フリースランド公ラートボート家の末裔であるオルトルートを妻にしたと主張する。
王の前にエルザ姫が呼ばれ、弁明をするよう言われるが、彼女は夢で見た神に遣わされた騎士の話をする。
審判は一騎打ちによる神の裁きにゆだねることになった。
エルザは自らの無実を証明するための戦士に、夢で見た騎士を選び、彼に領地も財産も自分への求婚の権利をも与えようという。
彼を呼び出すためのホルンが鳴らされたが、こたえはない。もう一度、呼び出しのホルンが吹かれ、エルザはひざまずき、天に向かって熱心に祈る。
すると白鳥に曳かれた小舟にのった騎士が現れた。輝く銀色の鎧をまとい、腰に小さい角笛をつけ、剣にもたれて舟の中に立っている。
金の鎖で舟を曳く白鳥を見たオルトルートは愕然とする。
片足を小舟に残した騎士が白鳥に身を傾け、「ありがとう。遠い道のりだが、お帰り。今度は我々が幸福になるとき戻ってくるのだぞ。 おまえもつとめを立派に果たすように」 と告げると、白鳥はおもむろに舟の向きをかえて、川を泳ぎのぼっていった。
騎士はエルザのために戦い、どこから来たか、なんという名か素性か決して尋ねないことを条件に夫になろうと人々の前で言い、エルザはそれを誓う。
気高い騎士の様子に貴族たちは戦いをやめるよう言うが、テルラムントはひかず、試合は行われ、騎士が勝利する。
敗れたテルラムントは苦悩に満ちて地面をのたうち、オルトルートは呪いの力が騎士にきかないことをつぶやく。
騎士とエルザは盾の上にのせられ、人々の歓声のなか、城へと運ばれていく。

 

第2幕 Zweiter Aufzug

夜、城内の寺院門前の階段に、追放の身となったテルラムントとオルトルートが座っている。
テルラムントは、エルザが弟ゴットフリートを水に沈めるところを見たといったオルトルートを非難する。
そのうえ彼女がラートボートの家柄がブラバンドの主となると予言したからこそ、妻にしたのだというが、 オルトルートは取り乱すことなく、騎士は悪い魔法のせいで勝ったといい、エルザが禁問を破り、騎士の素性を問うか、 騎士が体の一部を失うと魔法は力をなくしてしまうと説明する。
やがてテラスに出てきたエルザにオルトルートは哀れっぽく訴えかけ、同情したエルザが迎えに降りてくる間、 キリスト教によって汚された北欧の神、ヴォータン、フライヤに、キリスト教徒に対する自分の復讐の助力を願う。
オルトルートはエルザの身を案じるふりをして、騎士の素性のあやしさを語り、あらわれたときと同じように また魔法で突然いなくなってしまうのではと不安をあおるが、エルザの心はゆるがない。
夜が明け、王の伝令が騎士をブラバンド公に封ずること、しかし騎士は公と呼ばれたがらず、 ブラバンドの保護者とよんでもらいたい旨申し出ていること、今日、エルザ姫との結婚式を行い、 明日は王の招集に従ってハンガリーと闘うために出陣することを知らせる。
はなやかな衣装の婦人の行列が教会へ進み、美しく着飾ったエルザが階段をのぼると、後方にいたオルトルートが行く手をさえぎる。
オルトルートは召使いのようにエルザに従っているのががまんできないと言い、騎士の素性がしれないことをあげ、 来たときと同じようにいつまたエルザを捨てて流れて行くかしれない、だから口止めしたのさと言い放つ。
そこへ王や騎士がやってくる。テルラムントも現れ、神の裁き(一騎打ち)は悪い魔法に騙されたと訴え、騎士に素性を問う。
しかし騎士は答えず、王に問われても断るという。彼が答えなければならないのはただひとり、エルザだけ。
一方、エルザの心のなかにはオルトルートがまいた疑いが芽ぶいていた。
それを見て取ったテルラムントは騎士のほんの指先だけでも切らせてくれれば魔法は破れ、そうなれば彼はエルザから決して離れられなくなるとささやく。
疑いを捨て、信じることを決めたエルザは騎士につれられ、王の先導により寺院へ進む。

 

第3幕 Dritter Aufzug

婚礼の合唱の声が近づいてくる。歌の途中で後方左右の扉が響き、右手からエルザを導いて女性たちが、左手から騎士を導いて王と男たちが入ってくる。
王は花嫁と花婿を抱擁して祝福する。ふたりを残し、男たちの列は右手から、女たちの列が左手から去り、最後に小姓たちが扉を閉め、歌声が遠ざかり消えてゆく。
ふたりきりになったエルザはそれとなく騎士の名をたずねるがかわされる。
なおもたずねるエルザに騎士は、私は暗さや悩みではなく、輝きと喜びのなかからきたとさとすが、 それは逆に来たことをいつか後悔してエルザを捨てて戻っていく不安をつのらせる。
騎士を愛するあまり、ついに禁じられた問いを発してしまったエルザ。
その瞬間、禁問がやぶられたことによって魔法を失ったと思ったテルラムントらが剣を抜いて乱入してくるが、騎士に一撃で倒される。
騎士はテルラムントの死体を王の前へ運ばせ、王の前で素性を明かすべく、エルザの身支度をするよう、呼んだ2人の婦人に命じる。
夜は明け、シェルデ川ほとりの緑野に王と召集した兵が集まる。
そこへ覆いをかけたテルラムントの死体が担架にのせられて運ばれてくる。よろめくような足取りでエルザも来る。
やがて現れた騎士は王に戦いに同行できない旨をつげ、テルラムントの覆いを取ると、昨晩の出来事を話し、そして皆の前で素性を明かす。
・・皆の近づきえない、はるかな国にモンサルヴァートという城があり、そこには天使の群れが地上にもたらした聖杯グラール(※)が騎士たちによって守護されている。
毎年天国から一羽の鳩が聖杯の霊験を強めるため舞い降り、その杯により守護するものたちは神の力に守られているが、 聖なる秘密が明かされれば世間の人々の目を逃れなければならない。
騎士は聖杯グラールによって徳の正しさを守るために遣わされた者で、聖杯王パルシヴァルの息子、聖杯騎士ローエングリン。
エルザは罪を悔い、王と人々はひきとめようとするが、小舟を曳いた白鳥が川をさかのぼってくるのが見える。
ローエングリンは白鳥に、「1年経って、おまえの仕えるときが満ちたなら、そのときは聖杯グラールの力で救われて別の姿になるところを見たかったものを」 と話しかけ、
エルザを振り向き、「せめて1年なりともそばにいて、そなたの幸福を見届けたいと思っていたのに。
1年経てば、聖杯グラールに導かれて幸福な姿で、そなたが死んだと思っている弟君が帰ってきたものを」 といい、皆を驚かせる。
そして弟君が帰ってきたら渡して欲しいとエルザに危急のときに助けを与える角笛と、剣と、そして自分を思い出すように指輪を託す。
皆が悲しむなか、オルトルートはローエングリンが白鳥を連れて帰ることに感謝し、首にかかっている金の鎖で分かったと白鳥の正体を明かす。
白鳥はオルトルートの魔法によって姿を変えられたエルザの弟ゴットフリートだった。
憤激する皆に、キリスト教に追放された昔の(ゲルマンの)神々にそむいた報いだとオルトルートは歓喜する。
その言葉を聞いたローエングリンは祈りをささげる。するとグラールの白鳩が舟の上に舞い降りてくる。
ローエングリンが白鳥の金の鎖を解くと、白鳥は水にもぐったが、浮かび上がったのは銀色の鎧まぶしい美少年、ゴットフリートだった。
魔法が解け元の姿に戻ったゴットフリートを抱き上げて、岸へのせると、ローエングリンは彼をブラバンド公として紹介する。
エルザはゴットフリートを抱擁したあと、あわただしく視線を岸へ向けるが、そこにはもうローエングリンの姿はなかった。
遠く、白鳩が鎖をくわえて曳いていく舟の中に頭をたれ、悲しげに盾にもたれて立っている姿を遠くに見て、エルザはゴットフリートの腕に抱かれつつ、地面にくずおれる。

※ 聖杯(グラール)とは
イエス・キリストが最後の晩餐のときにぶどう酒を注ぎ、弟子たちと最後の別れの挨拶に飲み交わした杯。
また、ゴルゴタの丘で十字架にかかって処刑されたときにその血を受けた器。
一度天上に帰ったが、のちに天使の群に守られて地上にくだり、スペイン北部の山中にあるといわれるモンサルヴァートの聖杯城に パルツィヴァールを長とする騎士たちに守護されて安置されることになった。