チキ号やポッツさんの発明品のメカニズムに科学的メスを入れていきます。
果たしてあの珍発明の数々には科学的合理性は貫かれているんでしょうか?
チキチキバンバンの飛行の可能性を探る
みなさん不思議に思いませんか? チキ号って本当に飛べるんでしょうか?
ついに禁断の話題にふれる考察です(笑)。 長い間疑問に思ってたんですが、工科大で航空力学を学び、鳥人間コンテストにも 出場した経験のある方の協力を得てついに謎に迫ります。
また、科学の世界から見たチキチキバンバンの姿を追っていきます。
これは、空気密度と速度、代表面積、揚力係数から 浮力を割り出す数式で、ここに答えがあります!
揚力(ようりょく、lift)は、流体(液体や気体)中の物体(たとえば翼)に働く力のうち、流れの方向に垂直な成分をいいます。ただし揚力とは物体が流体の中を進むことによって発生する力のことのみで、物体が静止していてもはたらく浮力は含まないとします。
【数式の穴埋め】
・V=速度(m/秒)
劇場パンフにのスペック表に時速160kmとありました。 従って分速は44.4m/秒。V=44.4となります。
・S=代表面積(平方m)
DVDの予約特典のオモチャから割り出そうと思っていたんですが、偶然古い三面図を見つけました。
これと劇場パンフの寸法表の全長:5.36m、全幅:1.75mを使って大体の面積を割り出してみると18.5平方mでした。
S=18.5となりました。
・ρ(ロー)=流体の密度(kg/立方m)
この場合は空気密度を差します。
標準大気(海面高度で摂氏15度)の空気密度1.2250kg/立方mをそのまま使います。
ρ=1.2250とします。
ここまで来てなんなんですが、揚力係数が解らないので知人にたずねたんですが 専門的な計算やらナンやら必要なのです。
なもので、チキチキ号の写真を見せたんですよ。ドキドキしながら…
「うーん、この羽で飛ぶのはかなり難しいなー」
ですって…数式に当てはめるまでもないようです。
んなこたー百も承知なんですがねー。
でも、ここで終わりません。
チキチキ号を飛ばすために必要な技術は1920年代には ある程度成果をあげ、テスト飛行にも成功しています。
1920年ですよ、1920年!
この年代の一致は、偶然ではないと思いたい!
ポッツ氏はこれを元にチキ号を飛ばすことを 考えていたのではないのでしょうか?
思い出してください。
ボンバースト男爵の城から脱出する際、チキ号は ヘリコプターのように、ローターによる垂直離陸をしています。
1920年代のお話にヘリコプターの技術が何気なく登場していますがみなさんは不思議に思いませんでしたか?
上に書いた、1920年代にテスト飛行に成功した乗物とは…そうです。ヘリコプターのことなのです。
同じ時期に世界のどこかで(スペインなのですが)初飛行に成功した世紀の大発明を知ってか知らずか、チキ号はローターにより垂直離陸!
ここでもポッツ氏は大発明家の素質をチラリのぞかせていたのです。
さて、ヘリコプターは1907年にスペインで初飛行に成功しました。
といっても、これはローターを回して浮くことがなんとか可能になった程度で、安定して浮いたり、進んだりというものではなかったようです。
その後、同軸反転式ヘリコプターがテストされ、1921年には2号機が無事飛行に成功。
そして1923年に完成した3号機の初飛行が、現在でいうヘリコプターの初飛行となりました。
チキチキバンバンの舞台は1920年ですから、時代的な考証の面から見てもチキ号が飛ぶことは突拍子もない夢物語ではありません。
いやっ、むしろよく考えられていますよねー。
このチキ号の飛行について、翼の上にプロペラがあっては浮かないと思いがちですが、現実に翼の上にプロペラがあるけど飛ぶ乗物がありました。
これも1920年代にテスト飛行に成功していました。(おおおーっ!)
ですが、チキ号の垂直離陸を認めるとこの問題自体が大きな落とし穴にはまってしまいます。
というのも、ヘリコプターはローターで垂直離陸しますが 推進力は、そのローターを傾けることで得ています。
(本当はブレードのピッチ角を変えたりと複雑なんですが、ま、簡単に)
そんなことから浮上しそうな問題をいくつかあげると…
「翼の上にプロペラがあっては浮かないはずだけど」
「ピッチ角が変わるようなローターに見えない!」
「チキ号がヘリコプターな車体後部のプロペラは何か?」
「ヘリコプターには主翼な必要ないんじゃないか?」 等々が考えられます。
しかし、この問題を解く鍵が近いところにありました。 オートジャイロです。
面白いことにオートジャイロの生まれ故郷もスペインで、 ヘリコプター3号機と同じ1923年に初飛行に成功しています。
オートジャイロといえば僕なんかは『ルパン3世 カリオストロの城』でカリオストロ伯爵が乗るあれしか思い浮かばないのですが、 翼のある飛行機のようなものと考えて間違いありません。
初めて知りましたが、オートジャイロのローターはエンジンの力で回転するのではなく、機体が進むことで風の抵抗が発生し勝手に回っているだけの代物なんだそうです。
(これを自動回転式ローターといいます。)
で、ローターが回ることで揚力が発生し機体が浮き(正確に言うと “浮く”のではなく“浮きやすく”なり、翼によって発生する力で揚力を助け、結果的に飛びやすくなる)、あとはプロペラの推進力などで前に進みます。
ですから、ピッチ角が変わるようなローターは必要なく、ヘリコプターと違い主翼が必要で、推進力を得るためのプロペラも必要なのです。
また、機体上部に(たいていは翼にかかるように)ローターがあります。
しかしながら、ヘリコプターとオートジャイロの開発時期の一致は非常に興味深いところです。
それも同じスペインで。
開発史をみると、考案はヘリコプターの方が早いですが、お互いの技術がお互いの開発に役立ち、二人三脚のように成功を納めたように感じます。
しかし、兄弟のように見えて、実はまったく原理の違う航空機なのです。
さて、ここまで読んでさらなる疑問がわいてきたという方、いますよねー。
「じゃあ、チキ号はヘリコプターなのか?オートジャイロなのか?」
専門家によると計測に値しない揚力係数を誇るチキ号が、“自動回転式ローター”の発する揚力を得て飛行するオートジャイロであるとするなら、ボンバースト男爵の城からヘリコプターのように垂直離陸したのは何故なのか?
今度はこの問題について考えてみましょう。
まず次の文章をお読み下さい。これは、ある航空機の姿と飛行法を記述したものです。
「飛行機のような固定翼があるが、ヘリコプターのようにローターにより垂直離陸する。
巡航中はオートジャイロのように、ローターを自動回転させながら、主として固定翼で揚力を負担し、胴体後部のプロペラで推進力を得る」
どうですか? チキチキが目に浮かびましたよねー。
いやっ、これはチキチキ以外の何モノでもありません。こんな素敵な乗り物が他にあると思えますか?
どころが、あったのです!
それは米国で実験されていた(いる?)「カーターコプター」です。
手持ちの資料が古く、現在どうなっているのか分りませんが、1998年に、試作機による初飛行に成功しています。
実際のカーターコプター(Cartercopter)はこういう外見で、高度15,000mを650km/hで飛べるんだそうですが、 飛行法も仕組みもチキチキのそれである点には驚きました。
ポッツ氏は80年以上後に、カーターコプターが実現させた驚異の飛行法を、作り話の中で(つまり理論上は)完成させていたと言えないでしょうか?
自動卵割り機は作れるのか?
ポッツ氏の発明の中でもひときわ印象深い朝食マシーン。
この装置の多彩な機能の中でも特に、自動卵割りマシーンは動きがコミカルで面白いですよねー。
そんな夢のマシーンが作れないものかと調べてみました。
まずはHPで関連資料を集めてたんですが、いきなり出てきました、スゴイのが。
ポッツ氏の他にも自動卵割りマシーンを必要とする人は多いようで、同じ発想のマシーンが日本中にありました。
マヨネーズメーカーなどの工場がそうで、各社が製産ラインにあった装置を独自に開発しています。
工場見学などで実物が動く様子を見学できるようですが、HPに写真付きで紹介しているメーカーはありません。
でも、あったんですねー。自動卵割りマシーンをメインに製造・販売する会社が!
このマシーンは売り物ですから、HPで写真や映像でデモが見られます。
▼割卵機のミタカ電機 製品名:自動割卵装置「割蔵」EG-60S
この会社の所在地は長崎県。創立昭和29年と会社の歴史は長いのですが、自動卵割りマシーンを手がけたのはこの10年ほどのことだとか…。
この機械、元々は工場向けの自動化装置をメインに開発・製造・販売されていました。
現在特許を6つ(他に出願中の特許が1つ。内容は秘密。HPには特許5件取得/実用新案4件取得となってます)お持ちなので、「呼び子キャンディ製造機」等チキに関連した自動化装置を他にも製造しておられないかと、かなり熱く期待しましたが、ほとんどが金属溶接など工場の自動化に関するものだそうです。残念!
現在、同社の自動卵割りマシーンは全国の食品メーカーなどで100機以上が活躍しています。
他に同様の製品を製造するメーカーがないため圧倒的な独占状態です。
このマシーンがスゴイのは『割るのではなく切る』という発想から生まれたところです。
ダイヤモンドカッターで殻を半分に切り、中味を取り出すのです。それも1時間に3,600個というから驚きました。
で、気になるお値段は1機=195万円。
してくれる仕事を考えると、これでも安い方だと思うのですが、そう簡単に手が出せる金額ではありません。
しかし、小規模の工場や個人商店の要望に応えるため、現在、より小型で安価なミニ自動割卵マシーンを開発中だということなので、近々僕らも目にする機会があるかも知れません。
ちなみに、ミタカ電機さんは業界でも“不況知らずの超優良企業”と厚い尊敬を集めています。
散髪マシンの構造を探る(その1)
以前、卵割りマシンの現代版を紹介した時に感じたんですが ポッツ氏の発明は30年の時を経て多くが実現しています。
卵割りマシン(工業用)にはじまり、カーペット掃除機、テレビ、3輪自転車、子守りマシン(天井にぶら下げるアレ。
最近すっかり見ないですが)などなど。
その中で、唯一とも言える実現していない発明品が「散髪マシン」です。 今まで誰も完成させていないのですから(ポッツ氏さえも。あれは失敗ですよね)難易度の高いシステムなんでしょう。
その構造にはとても興味を惹かれるので、その仕組みについて考えてみたいと思います。
本編を見てみるとこのマシンは「全自動の電気散髪機」と訳されています。
元の英語のセリフに「電気」を示す語はありませんが、三輪自転車のモーターから散髪機にらせんコードが2本のびているし帽子の部分にもコイル状のパーツがありますから『電気』を使ったメカである点は疑いはないようです。
初めてあのマシンを見た時に「リンゴの皮むき器」を思い出しました。
リンゴを回すのと、刃を回す違いはありますが、なんとなく似ているように思います。
ただ、カミソリやハサミのような刃では頭皮を傷つけてしまう恐れがあるため高い精度や、頭皮を傷つけにくい仕掛けが必要でしょう。
そこで色々調べてみましたが「みかんの皮むき器」なら可能ではないでしょうか?
リンゴの皮むき器は以前からありましたが、みかん、グレープフルーツなどの 柑橘類の皮は中味を傷つけてしまうため、非常に製品化が難しいとされていました。
ところがこの機械は、むき出しのカミソリ刃を使わず、刃を仕込んだ筒状のパーツで 表面をなでるようにトレースするため、中味を傷つけず皮だけをむくことができるのです。
おそらくはポッツさんの散髪マシーンの心臓部にも、これと似た技術が使われていたのではないでしょうか?
あるいは、もっとシンプルに考えて電気バリカンとか?
いずれにしろ大きな疑問が残ります。刈り取った後の髪の毛が出てきません。
また、あれが単純なみかんの皮むき器式であれば、ギアやベルト駆動で済むでしょうし、モーター駆動であってたとしてもあのような回りくどい仕組みは必要ないでしょう。
あるいは、刃物を使わないで弱いレーザーカッターで切った考えられないでしょうか?
眼球を切らずに角膜だけ切り取れる医療用のレーザーカッターがありますから頭皮を傷つけずに髪の毛だけ切ることは無理ではないはずです。
また、阿修羅ちづるさんによるとステージ版では養鶏場のおやじさんが「にわとりの羽をむしる用に使える! 」と買ってくれたようですが、レーザーカッターなら、にわとり用への転用も簡単なようにも思えます。
しかし、その前にポッツ氏は1920年にレーザー技術を確立していたのでしょうか?
その可能性はあながち捨て切れません。
劇場パンフによるとチキのヘッドライトは「透光力2km」とあります。
この透光力というのがよく分からないのですが、まあともかく誇るべき威力なのでしょう。
せいぜい直径10数センチのライトですから光の量を多くするには限界がありますから、レーザーのように光を収束しなければならないはすです。
ポッツ氏はレーザー技術の元となる光の収束器を開発し、チキのヘッドライトに転用。
さらに、この技術を応用して散髪マシンを開発したのではないでしょうか?
そして、本来は発動機から電力を取るべきところを、遊園地内という事情もあり三輪自転車で人力で発電したため、コントロールできなくなりオーバーロードしてしまったのかも知れません。
あの煙りは髪の毛が燃えた煙りではなく、オーバーロードによる煙りだったんですよ。
非常に大胆ではありますが可能性はあると思います。
まぁ、これにヘッドユニット上のパラソルの役割が説明できればさらに説得力を増すのでしょうが、今は考察できるのは、ひとまずここまでです。
ちなみに、『レーザー(Light Amplification by stimulated emssion of radiation【Light=光、Amplification=拡張、Stimulated=刺激させた、Emssion=放出、放射、Radiation=放射、発散。直訳=誘導放出による光の増幅】の頭文字をとってLaser)』は1953年にアメリカで開発されました。
呼子キャンディー製造機NEW
工場全体に犬たちを呼び寄せて製造がマヒしてしまう大損害を与えたため、一旦は激怒させたスクランプシャス卿を考え直させ、ポッツ氏とわざわざ契約を結ばせる判断をさせた「呼子キャンディ」。
それはポッツさんが発明した製造機の不調によって偶然生まれたもので、ポッツさんはなぜ穴が開くかを全く解ってなかったようでしたが、トゥルーリーは一目で「熱し過ぎ」と指摘しました。
つまりあまりの高温でキャンディの原料の砂糖を溶かしたためグツグツと 沸騰して、その気泡がそのまま固まったんでしょうね。
キャンディ作りに詳しそうだった彼女は、ひょっとしてスクランプシャス社のキャンディ部門、むしろ、お菓子作り全部門の重要なポジションにいたのかも知れません。
この呼子キャンデーは「犬用キャンデー」として売れたのでもはや穴は不要ですから、トゥルーリーの知識を活かせば穴の開かないキャンディ製造機を完成させることも可能でしょう。
いやそれどころか、あれは自動化されたお菓子製造機なんですから、完全に人力に頼っていたあの工場を大きく発展させる基礎とも成り得る大発明なのです!
契約を交わすためにわざわざやってきたスクランプシャス卿はバンジーに再会し御満悦でしたが、やがて通された風車小屋で数々の自動機械と共にキャンデー製造機を見せられて、 その重大さに気づくに違いありません。
なにせ産業革命をいち早く成し遂げたイギリスという国で、あれだけの工場を「人間オートメーション」みたいなスケジュールで経営してる卿のことですから、本当の機械によるオートメーション化に無関心な訳がないじゃないですか!(笑)
ちょっと社会からはみ出したようなポッツ氏の発想に、トゥルーリーのリアルさのある視点が加わって、以前は日の目を見なかった発明品が次々と実用的なものに生まれ変わり、それをスクランプシャス社の財力が後押しする。
ポッツ氏の今後にはきっと、そういう輝かしい大成功が待ち受けていることでしょう。
これって、「ほんとうにステキ!」なことですよね!