制作のきっかけ
1970年代の終わり頃、高校生だった私は学校帰りに立ち寄った老舗デパートのミニカー売場でコーギーのチキチキバンバンを見つけました。子供の頃に売ってるのを見て以来、久しぶりの対面だったので、「まだ売ってたんだ」とすっかりうれしくなってしまったうえに、他にもボンドカーやバットマンカーも見つけ、ますますテンンションは上がり、さらにデパートの店員の後ろの棚にチキ号とボンバースト男爵の飛行船が詰め合わされた大きなプレイセットが置いてあったのを見た時、その喜びは頂天に達しました。
ただ、当時はまだ熱心なコレクターではなかったので「うわぁ~、こんなのもあるんだぁ~」と感心はしたものの購入には至りませんでしたが、その姿はしっかりと瞼に焼き付いて、それからずっと忘れることはありませんでした。
それで大人になって、キャラクターミニカーのコレクションを始めた時、あの時のプレイセットも探しましたがみつからないのです。
それどころか当時出たコーギーのほぼ全車種が写真付きで掲載されている資料本にも全く載っていないではないですか!
その後、インターネット時代になってワールドワイドで検索できるようになってからも、あのプレイセットに関する資料は皆無でした。
日本のコレクターが「知らない」「持ってない」ということはあっても、世界中のコレクターが「知らない」というのはちょっと考えにくいので、ひょっとしたらあの時見たのは幻だったのかもしれません。
まぁ、でも存在しないのなら作ればいいだけのこと。幸い模型作りは好きで、でっち上げスクラッチビルドは得意なので、あの時に見た幻らしきものを作ってみることにしましょうか?(笑)
資料集め
「良い模型は良い資料集めから」、これは模型作りの元祖である12世紀のモーデル伯爵が残した言葉だそうです(ウソ)。
組み立てればいいキットとは違ってスクラッチビルドは資料集めが肝心ですが、『チキチキバンバン』の資料なんてほとんどありません。
(1)遠い昔にダビングしたビデオ(2)リバイバル時に買った昭和51年発行のパンフ(3)ネットで拾ったパズルに描かれた絵
せいぜいこの3点です。(1)には当然、映ってますが、これは参考程度(2)にはモノクロの前半分の写真しか無し。(3)はけっこう参考になりますが、絵なのでディフォルメされている可能性があります。
(2)の表紙とその中にあるモノクロ写真。
(3)のイラスト。上の写真とはフォルムが異なるのが分かりますね。
こちらだと、クロワッサンみたいな形です。
画面で確認したところ、一瞬このような形に見えるシーンも確かにありました。
よく考えてみると、この部分、布の中身にガスが入ったバルーンなので、下からの風で吹き上げられたら、ゴンドラ部分の加重が下に働いて中央だけひっぱられて、こういうフォルムに変形することもあるんでしょうね…。
たぶん、この絵を描いた画家は参考資料としてそのシーンのスチルを渡されたんでしょう。
制作開始
集めた資料に基づいて大まかな図面を引きます。今回は正確なスケールモデルというよりはコーギーのチキと並べて違和感のないイメージモデルというコンセプトなので大ざっぱな図面に止めました。
モノクロ写真から類推して、正確なスケールだとかなり巨大になりそうだし…。
飛行船のバルーン部分をどうするかですが、今回は自立させるために、軽量化を図り発泡スチロールを芯にすることに決定。
まずは切れ端を大まかな形に成型し、ガムテでグルグル巻きにして固めます。
100円ショップで売ってる軽量紙粘土を盛り上げていきます。
ホントは白いのがほしかったけど、売ってなかったので淡い色のモノをチョイス。下の図面と大きさが違っているのはキニシナイ(笑)。
あとはこのまま乾くまで一晩放置です……。
バルーン部が乾くのを待つ間に、下の骨組み部分を作ります。
今回は重さはあまりかからないのでプラ板で制作。費用節減のためにCD-Rに付いてきた透明のCD型のプラ材をカットして作りました。
切り取ったプラ板を加工してから、組立。サイズ的に切れ込みやホゾを入れることが難しそうなので、ゴム系ボンドでいきなり接着することに。
底材をプレステにガムテで貼り付けて、その上に組み上げていきます。
組み上げた骨組みは透明なままでは訳が分からないのでマジックで仮塗装(紫だけはプラカラー塗り)してみました。
さて今度は接着剤がしっかりと固まるまでの時間を活かして、下のゴンドラ制作を始めます。これも費用節減のため、贈答品が入っていた箱の再使用ですが、バルサ材なので軽いうえに加工もしやすく好都合です。
この部分も自立させるために大きめに作ることにしました。
組み上げ後バランスが悪ければ、ここに重しを積めばいいし…。
ここまでで初日の作業はお終い。
あとは紙粘土と接着剤の乾くのを待ちつつ、お休みなさい……。
一晩明けて、紙粘土が半乾き程度になってきました。
それと同時にひび割れも発生してきたので、塑像の要領で水をたっぷりと含んだ柔らかい紙粘土を指で擦り込んでいきます。
表面をツルツルに整形しながら、デコボコも押さえ込んでいきます。
この肯定を数回繰り返し、ひび割れのない正確な形に近づけていき、そしてまた乾くまで放置です。
表面がだいぶ乾いてきたので、軽く塗装します。表面仕上げはまだまだですがここで色を塗る理由は、この紙粘土はこのままではペーパーがけが困難なので、紙粘土にプラカラーをしみこませて、削り取れる皮膜を作るのが狙いの一つです。
塗ってみてあまり凸凹が目立たなければ、そのままフィニッシュにしてもいいし…。
ん~、今一つかな?(w
ついでに仮組みしてみましたが、やった、狙いとおり見事に自立します。
ちょっとボケてるので写真だと分かりにくいですが、ゴンドラをバルーンに吊るロープは極細の針金を編んで作りました。
とりあえずの完成と写真撮影
バルーン側面の紋章の資料がないので、今回の作業はここまでのようです…。
ポッツ爺さんの小屋を急遽作って、写真を撮りました。(実は最初から作るつもりで図面にも書き込んであったんですがw)
ポッツ爺さんをさらってボンバースト城上空まで逃げてきた飛行船と、後を追うチキチキバンバン。
いずれは紋章と共に男爵の手下のスパイも作らないとダメですが、ま、それはまたの機会に(笑)
おまけ
なんと今日、取り寄せ中だった資料。
封切り時の簡易パンフが手に入りました!
これからさっそく研究に入りま~す!(笑)
とりあえず封切り時の邦題は『チキ・チキ バン・バン』、リバイバル時は『チキチキバンバン』らしいのは分かりました~!
さらに新資料発見!
な、なんとさらにまたこういう資料を発見しました!
これは封切り時の正式パンフで外見は(2)のパンフと同じですが、中身が一部異なり、こういう貴重な写真が収録されていたのです。
この写真で、どうもこれまでのままでは白い部分が長すぎるのと、鉄骨部分が後ろの方で絞ってあるのを確認できました。
やはりモーデル伯爵の教えは偉大ですね~(苦笑)。
それでさっそく、できる部分は修正に入ります。
あと、紋章の形もこれでほとんど解るので、もう描いちゃましょう。
フィギュアの制作
せっかくチキにはフィギュアが乗ってるのでボンバースト号にも載せてあげましょう。
タミヤのフィギュアがちょうどいい大きさなのですが、近場には売ってません。
それでジョイフル本田で情景人形を探したところ、HOスケールの物しかなく、しかも高価でした。そこでボトルキャップを改造することを思いつき、1個100円という手頃な『猿の惑星』シリーズを入手します。PVC樹脂でヤスリかけはできないので、焼きゴテで表面を溶かして加工していきます。
ついでにポッツ爺さんの小屋にもディテールアップを施して…。
ついに完成!
上の写真と見比べて下さい。ま、こんなもんかな?
さて次はトゥルーリーのCUB1でも作りましょうかね…。